歯根破折歯の診断
2023/02/08
垂直性歯根破折歯の診断は、歯科医師にとっても歯痒い治療に陥りがちな状態である。
症状が強くなく、症状の上下があり、診断が明確になっても、抜髄や抜歯が必要になる可能性が高いことを理解してもらうことにも十分な説明が必要になってくる。現在、歯根破折歯を再接着する方法も開発されているが、長期的な安定した予後の発表は少ないのが現状である。
垂直性の歯根破折が生じている所見
破折初期では、歯周病が軽度なのに、一部分のみ歯周ポケットが深い、硬いものや粘度の高いものを咀嚼した時に、違和感があると訴えることがある。
- デンタルX線の所見で、歯根を取り囲むような歯槽骨の部分的な吸収を示す透過像
- ごく狭い範囲に垂直的な骨吸収を示す歯周ポケット。状況によっては、破折部に沿って補綴物が動揺することがあったり、破折歯のみ異常な歯の動揺を認めることがある。
- 瘻孔が生じているが、比較的小さく、歯肉縁の近くに存在する。根尖病巣は、側枝の可能性も否定できないが、根尖相当部の腫脹が多い。
- すでに良好な根管充填や比較的長いポストによる築造がなされている。側枝が認められないが、歯根周囲に放射状に広がる病巣が存在する場合には、破折線からバクテリアポンプとなり、病変を拡大させている可能性がある。
- 残存象牙質が少なく、状況によっては、セメント質まで及ぶような歯質の喪失が認められる。大抵は、太くて長いポストによって補綴が行われている。冠の脱離は、よく経験することであるが、冠だけではなく、ポストと共に破折した場合には、しっかり乾燥させ、強いライトで破折線の有無を確認する必要がある。不完全破折の場合にも再装着の際に同部に咬合圧が集中しないように配慮する。
- ブラクサーであったり、硬質の食物を好む傾向がある人や、欠損部の補綴が未完了もしくは放置されている場合には、咬合力の負担が大きくなっていることがある。
- 医療面接で、欠損に至った理由をしっかり記憶を辿ってもらうことが重要である。歯根破折に至っていない場合でも、太く長いポストが形成されている場合やX線画像の読影時に歯根膜の拡大が広範囲にうっすらと広がっている所見が認められた場合には、将来的に歯根破折の可能性があるので、しっかりと聴取しておく必要がある。
山梨 あいざわ歯科クリニック